+Negative/本当は、誰か傍に居て欲しかったのかも知れない

 虚しくも崩れていく世界が目に浮かぶ。
 今にも此処から飛び出したい衝動に駆られ、それでも飛び出せない自分が此処に居た。
 ――誰か助けて。
 何度その言葉を叫んだだろう。
 その度に、自分の声は他人に届いていないことを思い知らされた。
 死にたい。
 その言葉ですら慣れてしまって、嫌悪感が冷え切ったこの心に満ちていく。
 誰も助けてくれない。誰も信じたくない。自分の力で変わらなきゃいけない。
 わかっているのに、それが出来なかった。
 だから、飛び出したい。

「此処から飛ぶの?」
 不意に聞こえた小さな声。
「死にたいの?」
「死ねないんだ。死にたいのに」
 自分の中から零れ落ちる言葉。
 嘘偽りのない言葉。
「じゃあ、死なないで。この場所、大好きだから」
「なら、止めてよ。止めて。死なないように、止め続けて」
「死ねないんでしょ?」
「でも、死にたい…」
 もう嫌だ。
 それほどに、受けた傷は深く苦しいもの。
「何で死にたいの?」
「怖いから。だから逃げたくて、最後に死を選んだ…」
「何で死ねないの?」
「変わることが怖いから。飛び出したその先に何があるかわからないから…」
 だから怖い。
 所詮は、自分が傷つくことを恐れている。
「辛い?」
「苦しい…」
「悲しい?」
「寂しい…」
 誰でも良かった。傍に居て、話を聞いてくれる人が居て。
 くだらないことで笑い、つまらないことで一緒に泣いてみたかった。
 その夢すらも叶わない。
 信じられない。人も何も。
 でも、恨みたくない。奇麗事だといわれようとも。
 全て自分が悪いことくらいわかっているから……。
「泣きなよ。傍に居るから」
「泣けない。泣きたくない」
「泣くことは格好悪くないよ?」
「泣き方、忘れちゃったよ…」
 溢れてくるのは涙だけで。それでも温かかった。
 ずっと泣いていたかった。
 心に溜まった霞みたいな塊を、全て吐き出して楽になりたかった。
「もう少しだけ、傍に居て…」
「泣き止むまで居るよ。此処は、お気に入りの場所だから」

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