荒野に咲いた一輪の花。その花は赤く、まるで血を吸ったよう。
 俺は銃を片手にその花を踏み潰した。気がついたら、踏んでいた。

  +第二夜+

 埃ぽい匂いが漂う。懐かしい。それ以上に体に悪そうだ。
 銃を握る。物心ついた頃には握っていた銃だ。
 別に気に入っているわけでもなく、かと言って嫌いなわけでもない。
 でも、正直言って持っていないと落ち着かないのは事実った。
 足音が止まった。ターゲットたちが立ち止まったようだ。
 此処で、取引が行われる。此処が、あいつらの墓場。此処で、俺はあいつらを殺す。
 そう思うだけで、心が躍り、それと同時に痛んだ。
 未だに慣れない、人を殺したあとの気持ち悪さと同時の高揚。
 あの感じが忘れられない。あの感じが、俺を戦場へと呼び戻す。
 一瞬の隙を見た。ターゲットがトランクを開けた瞬間――。
 俺は飛び出した。
 最初にターゲットと、その取引の相手を撃ちぬく。
「何者だ!」
 次にボディーガードマンたちが生き残ろうと俺に銃口を向けてくる。
『聞こえますか?派遣者が今そちらにつきました』
「ちっ」
 せっかくの獲物だ。一人で楽しみたい。
 …早く片付けるか。
 そう思ったものの、意外と相手側の量が多い。暫く時間がかかるな。
 ソファーの後ろに隠れ、弾の補充をする。その間も雨のような銃撃は止むことがなかった。
 しかし、一瞬弱まったその隙を、見逃さず反撃に出る。
 一人二人と倒れるが…。不意に一撃掠った。
 素人も混ざっているような、そんな銃撃だ。今日は、調子が悪いな。
『よ、相棒さん』
 不意に無線が入る。同年代らしい、しかも明るそうな声だ。
「……」
『死んでないよな?助太刀するぜ』
「俺に相棒は必要ない」
「そう言うなよっと」
 鮮明に声が聞こえたと思ったら、真後ろからやってきた。二丁拳銃を操って、一気に押しに入る。
「少しは役に立つだろ?」
「爪が甘い」

 彼が振り向いた瞬間に、敵が銃口を向けてきた。引き金を引く前に敵を撃ち倒す。
 無謀な戦い方。明るく大らか性格。どれもこれも俺には出来ないようなことだった。
 気がついた頃には、敵は全滅。大して、強い相手ではなかったしな。
「敵の全滅確認。これより帰還する」
『了解』
「お前硬いな。そんなんじゃ女に嫌われんぜ」
「好かれようとも思わない。じゃあな」
「ちょ、待って!俺、ライト。つってもコードネームだけど。お前は?」
「フェイトだ。運命なんていうもの、信じていないけどな」
 振り返らずに答える。どうでもいいことだ。でも、別の意味で楽しかった。
 死体を見て気持ち悪くなる。此処に居る理由もないしな。
「また会えるといいな。この組織で同い年くらいのなんて他に見たことねぇし」
「二度と会わないことを祈る」
 他人なんてどうでもいい。どうせ死んでいくのだから。
 荒野を背後に、ドームへと戻る。規則・秩序・時間に追われた世界。
 貴族だの権力だのと言う階級に縛られた世界だ。
『楽しそうですね』
「そうでもない」
『彼はあなたのことを気に入ったみたいですよ』
「関係ない」
『そう、ですか』
 少しだけ、意味深い言葉を吐く無線の相手。
 これから起こることは、必然か偶然か。