空に手をかざしても、何処にも何にも届きそうになかった。
それがただ悲しいと、思ったこともあった。
+第四夜+
朝。ドアを叩く音と、馬鹿でかい声に起こされた。
「フェイト〜、ほら朝だぜ!朝飯できてんぞー、起きろ!」
…五月蝿い。
無線からはこれで朝寝坊の心配もなくなったとか言っている。
無性に腹立って、ドアを蹴り開けてやった。
「うわっ?!っと、なにすんだよ!」
「…こっちの台詞だ。朝は起こすな」
「朝だから起きるんだろ。ほら、朝飯冷めちまうぜ」
そう言って席に座らされる。
「…朝は、食欲が」
「んなこと言ってないで早く食えよ。上に呼ばれてんだから」
「朝は行かないと言ってある」
「そんな子供じみたこと言わない!」
どっちがだ。お前さえ希望しなければ、俺は今まで通りにやっていたんだ。
心の中で思っても、口に出していえるはずがなかった。
他人なんて、どうでもいいが。
目の前に並んだ朝食は朝と言う感じのするものばかりで、久々に見た気がする。
でも、立ち上がって冷蔵庫から栄養補助食品とオレンジジュースを取り出す。
これで、充分。
「…おい」
低い声だ。無視して栄養補助食品を開けようとしたら取り上げられた。
「……」
「折角作ったんだから食えよ。栄養補助食品ってのは栄養を補助する為のものなんだぞ」
オレンジジュースはいいらしい。
「そんなに行きたければ一人で行けばいいだろう」
「なっ…」
「そこまで無理して俺を連れて行ってなにになる。それに、言っただろう。俺に相棒はいらない」
「別に、お前を連れて行こうとしてる訳じゃねぇけど…」
「なら何故俺に構う」
「…朝飯!ちゃんと食っとけよ」
そういうと一人で行ってしまった。最初から行く気はなかったが。
しょうがなく、料理に目を落とす。…食べるか。
『結局食べるなら、素直に最初から食べてあげればいいのに』
「五月蝿い」
『食材、冷蔵庫にはなにもないようで、朝からあちこちに買いに行ったみたいですよ?』
「何のために」
『フェイトさん…』
「俺には関係ない。俺は一人でよかったんだ」
そう。いつか死んでしまうのなら、情なんて移らないほうがいい。
いつ死ぬのかわからないのなら、誰とも関わらない方がいい。
『同い年がいたって喜んでのに』
「喜んでどうするんだ」
『だから、彼は彼なりに今を楽しもうとしているんです!』
「なにを感情的になっているんだ…」
『五月蝿い…!』
楽しんでどうする。楽しむとはなんなんだ。何故楽しもうとするんだ。
「楽しんだ、そのあとはどうするんだ…」
気分が高揚したあとの、その静けさ。
誰かと一緒に居たあとの、あの独りの感覚。
それならば、誰とも、なにも思わなければいい。
最後は辛くなってしまうのならば。これ以上は関わらない方がいい。
急にこみあげた吐き気。何かを思い出しそうになって。
自分の手が赤く染まっている幻覚を見た。
違う、幻覚なんかじゃない。…真実だ。
目の前がぐらついて見えた。歪み、崩れていく気がした。
なにもかも、忘れてしまえばいいのに。あの、悪夢さえも。
『ちょっと、返答を!フェイトさん!』
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