空を見上げれば星達が煌いていて。
 地に目を戻せば荒れ野原が続いていた。

  +第六夜+

「なんでもいいから少し食ったほうがいいぞ」
「…適当に頼む」
 気がつけば、右手がかすかに温かかった。ずっと、握っていたのか?
「嫌いなものはあるのか?」
「思いつかない」
「わかった」
 部屋から出て行くライトを見送り、暫く天井を眺めてみる。
 急に時間が流れ出したかのように。自分が生きているのだと、そう思った。
 つまらぬ日常が変わっていく。あいつの、ライトのせいで。
 だからと言って、あいつを殺そうとも思わない。
 暫く、このまま生きてやるさ。いずれ死ぬ運命なら。
『またつまらないことを考えているのですか』
 無線からいつもと変わらぬ少女の声が聞こえる。
「私情に使っていいのか」
『単に命令を伝えるだけってのも暇なんです』
 それはそうだろうが…。
「情が移るぞ」
『一生怯えてろ。馬鹿フェイト』
 馬鹿扱いされる覚えもないのだが。反撃するのも面倒だ。
 不意にドアが開く。ライト以外の誰が此処に来るというのだろう。
「雑炊。食えんだろ?」
「あぁ」
 持ってきたお盆の上にはたったいま作ったと言わんばかりの湯気を放出する鍋。
 こんなもの、此処にあったか…?
「そういやオレンジジュース、今日で賞味期限切れるみたいだけどどうする」
「好きにして構わない」
「じゃあ、新しいの買っとくな?」
「……」
 体を起き上がらせる。まだだるさは残るものの、そんなこと言ってはいられなかった。
「大丈夫か…?」
「平気だ」
 体を起こすのも手伝ってもらって、プライドと言うものがボロボロに引きちぎられる気がした。
 別に気にはしないし、そんなもの持ち合わせてもいないが。
「上はなにか言っていたか」
「お前こんな時にも仕事かよ…。んなこと気にせず少しは休め!」
「…なんと言っていた」
 俺が折れるなんてことはしない。もしかしたら次の仕事の話しかもしれない。
 そしたら、休んでなどいられるはずもなかった。
「パートナーはこれでいいかって言うことと、荷物を運ぶのとかどうするかとかそういう感じだよ。変更は、一週間以内だと」
 少し不貞腐れるようなそんな言い方だ。仕事の話しじゃないのなら、それでいい。
「で、どうするんだよ」
「なにがだ」
「同居。お前、嫌がってただろ」
「好きにしていい」
「嫌じゃないのか」
「朝起こさないのならそれでいい」
 まったく朝は弱いんだからと、無線の向こう側から聞こえた気がする。
「…なら、明日荷物整理するのに一回戻るな?」
「俺に了承を得る必要はあるのか?」
「急にいなくなったら心配かけるだろ」
「そう、なのか」
 やはり、人と言うものはわからない。わかりたくもない。
 情が移る前に死んでもらうことを願うな。