夜の風は生ぬるく、そして死臭を運ぶ。
そんな風が、ただ快いと思ったこともあった。
+第十五夜+
今まで溜まっていたものが、全て根こそぎ吐き出してしまえたらいいなと思った。
それくらいの勢いで、腹に入っていた全てのものを吐き出した。それでも、まだ気持ち悪い。
「っフェイト!」
『フェイトさん…』
敵を見れば笑っていて、俺を見て楽しんでいるんだと思った。
そして人間とは思えないような笑い声を上げながら、俺へと走って近づいてくる。
俺は必死に銃を構え、敵を撃ちまくった。ライトの状況を確認できる状況ではないが、それでも銃声は聞こえる。
撃っても撃ってもかわされて、目前となって敵は死体を投げつけてきた。
それを避けきることは出来ずに、頭を瞬時に守って、モロに受けた。
「フェイト!!」
普通なら精神崩壊を起こすのだろうが、俺は嫌に冷静だった。気持ち悪さは取れない。
血が顔に降り注いだ。また、吐きそうだった。でも吐けない。
自分がこんなにも情けないとは思わなかった。自分がこんなにも弱いとは思わなかった。
「…ライ、ト!」
標的がライトに代わった。ライトは必死にかわしていくが…。
「ねぇ待てよ其処のブス。僕のモノになんてことしてくれてるの。…死んで償えよ」
聞き覚えのある声が聞こえた気がする。駄目だ。視界すらもぼやけていく。
『フェイトさん!しっかりしてください。増援を呼びましたから、フィアさんを呼びましたから…!』
「猫、か…。っライト…」
意識が途切れていく。深い沼の其処へ沈んでいくかのように。混濁した心の中に、意識を手放した。
目が覚めると、いつもと変わらない部屋に居た。全てが夢だったかのように。
頭が、ぼんやりとする。ライトは、どうなったんだろうか。
「フェイト、起きたか…?」
「…ライト」
体を起こそうとしたら制された。
「あんまり動かない方がいいと思う。大丈夫か?」
「ああ。…服、着替えさせてくれたんだな」
「なにがいいんだかよくわからなかったけど、その辺のを適当に、な…」
笑顔のライトを見て安堵する。吐き気はない。でも、思い出すだけで気分が悪くなる。
「何か食うか?」
「いや、…今はいい」
正直なにも食べたくなかった。
「飲み物は」
「…なにも、いらない。…迷惑かけたな」
コイツと組んでから、相当な迷惑をかけている気がする。
今まで以上に自分が弱くなったのも感じる。
「フェイト…。俺は迷惑だなんて思ってないからさ」
右腕を顔の上に乗せる。光を見たくない気がしたから。
不意にライトが立ち上がるのがわかった。
部屋の外に出るのだろうな、なんて思いつつ。再び眠りにでもつこうかと、寝る体勢に入る。
そしたら、不意に温かく柔らかいものが頬に触れた。
「…ライト」
腕をどかすと意外にもライトの顔が近くにあり、驚きを感じた。
「えっと…」
自分からライトの顔を引き寄せ抱き締める。怖くて、温かい。
全て忘れてしまえばいいのに。
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