死者達の鎮魂歌。
 醜くも悲しい曲だった。

  +第十七夜+

「……ライト」
「ん、あ、いや。んな顔するなよ。ちょっと驚いただけだから」
 そう言って頬にキスをしてくるライト。
 これが幸せというものなのだろうか。
「怖く、なかったか?」
「平気だ。それに、今さらなことを聞くな」
「そうだけど。…よかったか?」
「……。答え方がわからない…」
 こう見ると、自分がどれだけの世間知らずかがよくわかる。
 この気持ちも、わからないまま。

 そのあと、ライトは俺をホームに残し仕事に出かけた。
 一人になるのがとても久しぶりに思えた。実際には弱三日ぶり。
 時間が経つのがとても遅く思える。なにもしない時間は何十年ぶり。
 組織に買われてから、ずっと仕事だったから。
 休みなんて必要ない。そんな俺も、変わってしまったんだな。
 醜いな。この時間が。あいつだけを戦わせている。
 そう思ってしまう自分が嫌に思えた。
 どうか、生きて帰ってきてくれ。そう願うことしか出来ない。
 今も昔も、無力なままだ。…ライト。
『フェイトさん』
「…なんだ」
『調子はどうですか…?』
「もう、平気だ。心配かけたな」
 無線越しの少女の姿。目に浮かびそうで、浮かべられない。
『そう、ですか…。心配したんですからね』
「情が移りすぎるのはよくない」
『わかってますよ。それでも、好きでいさせてください。あなたのことを』
「俺は……」
 急な告白で迷う。でも、そういえばそんな言葉もあったな。
 俺は、ライトのことを…。
『大丈夫ですよ。あなたと私の関係はこの無線だけですから♪ちゃんと理解しています』
 妄想のようなものだと、無線は言う。
『それに、想わせといて下さい。それと、あなたからの想いを受け取ろうなんて考えてませんから。その分、彼に伝えてください』
「俺は、…ライトのことが好きなのか?」
 恐れていたのかもしれない。その感情に気付くことを。
 同時に気付けてよかったと、そう思えた。
『フェイトさん?』
「いや、…好きなんだな。俺は」
 無線を外し、寝転がる。
 白く、高い天井。動く気にもなれない。
 そっと流れている涙を拭う。
 ほんの少しだけ開いてる窓から、優しく和やかな風が入り込む。
 陽の当たる時間など、知りたくなかったな。
 そっと心の中で呟いた言葉は、醜くも残酷な思い。
 寝て、しまえ。