+Negative/誰も気づいてくれなかった

 目の前が、赤く赤く染まっていった。
 本当はこんなつもりじゃなかった。
 ただ、みんなと話したり笑ったりしたかった。
 それなのに、目の前は赤く染まってる。
 教室が真っ赤に染まってる。
 悲鳴が聞こえ、無意識に腕を振り下ろす。
 握っていた包丁から伝わる肉を斬り裂く感触。
 こんなはずじゃなかった。
 自分を抑え切れなかった。
 全部、自分が悪いのに。
 自分が居なければ、みんな笑っていられたのに。
 なんで、こうなっちゃったの?
 なんで、抑えきれなかったんだろう。
 誰も気づいてくれなかった。
 誰も止めてくれなかった。
 嫌だよ…。
 奪ってしまった魂が重い。
 死なないでよ。
 死んでいかないで。
 私を止めてよ。
 お願いだから。
 
 呻き声が聞こえた。
 肉が見えて、必死に何かを言おうとしていて。
 醜かった。気持ち悪かった。
 吐き出しそうになるのを必死に堪えて、また腕を振り上げる。
 目玉が飛び散って、怖かった。
 気持ち悪い。
 嫌だ。嫌。
 疲れきって、肉と血溜まりにそのまま倒れた。
 その瞬間、目の前に好きだった人の顔があって。
 涙なのか血なのかわからない温かいものが頬に伝った。
「バイバイ」
 これで、みんなと一緒にいられる。
 さようなら、みんな。
 ずっとずっと一緒だね。
 最後の人殺し。
 自分の心臓に包丁が突き刺さる。
 みんなを殺したこの手で。
 自分を、殺した。

+BACK  +NEXT+